目次
1. 演奏のパートは決まっているのに、それ以外は誰も決めていない
新しいバンドを組むとき、あるいはメンバーが加わるとき、最初に決まるのはたいてい「誰が何のパートを弾くか」です。ボーカル、ギター、ベース、ドラム。ジャンルの方向性や、コピーが中心かオリジナル曲を作るかといった話も、比較的早い段階で共有されます。ところが、その次に必要になる「演奏以外」の仕事――スタジオを予約する、日程を調整する、お金を集めて管理する、機材を運ぶ、ライブのブッキングをする、SNSで告知する――については、誰がやるかを明示的に決めないまま活動が始まることが少なくありません。
結成したばかりの頃は、これでも困りません。人数が少なく、練習の頻度も低いうちは、気づいた人がその都度やればすむからです。しかし活動が続き、ライブに出るようになり、メンバーが入れ替わるようになってくると、この「決めていない」状態は静かに負担を積み上げていきます。私がこれまでこのブログで扱ってきたバンドを結成する前に決めておくことやお金とルールの話は、いずれも「何を決めるか」に焦点を当てた記事でしたが、この記事ではもう一歩踏み込んで「その決めたことを、誰が実際に動かして担うか」という、名前のつきにくい仕事の分担について整理していきます。
演奏以外の仕事は、地味で目立たず、うまくいっているときほど「やっていること自体」が見えなくなります。だからこそ、意識的に書き出し、誰が担うかを考え、必要であれば新しいメンバーを募集する段階でそれを伝えておくことが、後々の摩擦を減らす手立てになります。
2. バンドの「演奏以外」を全部書き出してみる
まずは、バンドの活動に付随する「演奏以外」の仕事を、思いつく限り棚卸ししてみます。ひとつひとつは小さな作業でも、並べてみると意外な量になることが実感できるはずです。
| タスクの分類 | 具体的な内容 | 気づかれにくいポイント |
|---|---|---|
| 日程調整 | 練習日を候補から絞り込む、全員の予定を集める、変更が出たら再調整する | 1回の練習を決めるのに何度もやり取りが発生する。第5章で詳しく扱います |
| スタジオ予約 | 空き状況を確認し、電話やWebで予約を取る。変更・キャンセルの連絡 | スタジオによって予約の手段もキャンセル規定も違う。第6章で扱います |
| お金の管理 | スタジオ代・交通費・機材費などを集金し、記録として残す | 中身のルール決めは別記事に譲り、この記事では「誰が集金と記録をやるか」だけを扱います |
| 機材の運搬 | アンプやドラム一式などをスタジオやライブハウスまで運ぶ | 車を持っている人に自然と寄りやすい。第8章で扱います |
| ライブのブッキング | 出演したいライブハウスに連絡し、日程やノルマの条件をすり合わせる | 対外的な交渉になるため、経験や度胸が要る仕事だと感じられやすい |
| 宣伝・SNS・写真 | 告知の投稿、ライブや練習の写真撮影、フライヤーの作成 | 「得意な人がやる」で決着しやすいが、その人が抜けると止まりがち |
| 音源・データ管理 | デモ音源や写真、譜面データをどこに置き、誰が管理するか | 置き場所そのものを決めていないバンドが多い |
| 当日の進行 | ライブ当日の集合・搬入・サウンドチェックの順番調整、MCの段取り | その場のノリで誰かが引き受けがちで、毎回同じ人になりやすい |
この一覧を眺めて「うちのバンドは全部同じ人がやっている」と感じたなら、それはめずらしいことではありません。次の章では、なぜそうなりやすいのかを考えます。
3. なぜ一人に寄るのか — 「気づいた人がやる」の積み重ね
演奏以外の仕事が一人に集中しやすいのには理由があります。多くの場合、誰かが「役割を奪おう」としたわけではなく、単に「気づいた人が、その都度やってしまった」ことの積み重ねです。最初にスタジオを予約した人が、次も自然と予約役になる。最初にSNSアカウントを作った人が、そのまま投稿担当になる。悪気のない小さな引き受けが繰り返され、気がつけば一人に集中している、という経過をたどることがほとんどです。
この構造は、規模の大きなバンドでも起こり得ます。ザ・ビートルズは、1967年8月27日にマネージャーのブライアン・エプスタインが急逝したあと、対外的な交渉やビジネス面を誰が担うかという役割が、バンドの中で明確に決まっていませんでした。その空白を埋めようとポール・マッカートニーが主導権を握ろうとしたところ、他のメンバーからは「独り善がりだ」と受け取られ、後の1969年5月8日には、アラン・クラインとの契約をめぐる採決でマッカートニーの提案が3対1で否決されるところまで、関係の摩擦が積み重なっていきます(ビートルズの解散問題 - Wikipedia)。もちろんアマチュアバンドの事情とは規模も背景も大きく異なりますが、「演奏以外の仕事を誰が担うかが決まっていないまま、気づいた人が引き受け続けると、それが独断だと受け取られる」という構造そのものは、規模を問わず起こり得るものです。
一人に寄ることそのものが悪いわけではありません。得意な人がまとめて担うほうが効率的な場面もあります。問題になるのは、それが「決めた結果」ではなく「なんとなくそうなった状態」のまま続き、担っている本人にも、周りのメンバーにも、それが自覚されていないときです。本業とバンド活動を両立させている人ほど、この負担が積み重なったときに真っ先に苦しくなります。
4. 誰が担うかを決める4つの考え方
演奏以外の仕事を割り振る際の考え方は、大きく4つに分けられます。どれが正解というものではなく、タスクの性質やバンドの人数によって組み合わせるのが現実的です。
| 考え方 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| ①得意な人がやる | スピードと質が上がりやすい(SNSが得意、電話交渉が得意など) | 得意な人が固定化し、その人が抜けたときに空白ができる |
| ②時間がある人がやる | 今の生活リズムに無理のない範囲で担える | 仕事や生活の状況は変わるため、定期的な見直しが必要 |
| ③物理的に近い・条件が合う人がやる | 車を持っている人が機材運搬を担うなど、合理的な割り振りができる | 特定の条件を持つ人に負担が偏りやすい(第8章で詳述) |
| ④持ち回りにする | 誰か一人に固定されず、全員が仕組みを理解できる | 引き継ぎの手間がかかり、小さなミスが起きやすい |
4人前後のバンドであれば、日程調整は持ち回り、お金の記録は得意な一人に固定、機材の運搬は車を持っている人、というように、タスクごとに違う考え方を当てはめるのが現実的です。大切なのは、どの考え方を採用したかを、少なくともメンバー間で言葉にして共有しておくことです。
5. 日程調整 — いちばん重くて、いちばん感謝されない仕事
演奏以外の仕事の中でも、日程調整は特に重くなりやすい作業です。候補日をいくつか出し、全員の都合を集め、都合の悪い人が出れば再調整し、直前になって変更が入ればまた連絡を回す――この一連の流れを、メッセージのやり取りだけでこなすのは、想像以上に手間がかかります。社会人サークルを対象にした調査でも、不満点や不安要素として「サークル内の人間関係」と並んで「スケジュール調整などのわずらわしさ」「会費や活動費などの金銭的負担」が上位に挙げられています(株式会社クロス・マーケティング「社会人サークルに関する調査」、全国47都道府県・20〜69歳・n=1,100・2025年2月21日〜23日実施、クロス・マーケティング)。これは音楽・バンドに限った調査ではありませんが、複数人が集まる活動に共通する負担として、参考になります。
この手間を減らすために、日程調整専用のツールを使うのも一つの方法です。「調整さん」にはバンド向けのページが用意されており、会員登録なしで使用制限もなく、URLを送るだけで出欠を確認できます(調整さん - バンド)。Googleカレンダーの共有カレンダー機能を使い、全員の予定を同期させておくという方法も一般的です(Google カレンダー)。
Memboの募集の投稿フォームには、実は「開催日時」の欄もあります。ただしこれは、募集タイプに「イベント」「オープン」「ジャム」を選んだときだけ表示される欄で、「メンバー募集」を選ぶと非表示になります(代わりにパートの選択欄が出ます)。つまりメンバー募集の投稿では、活動の曜日やペースを入れる専用の欄はありません。プロフィール側にも、自分が動ける時間帯を登録する項目はありません。だから活動のペースは、自由記述の「詳細説明」欄と自己紹介欄に書くことになります。ただし、これはメンバーを探す・見つける段階で目安を伝えるための項目であり、加入後のバンド内で複数人のスケジュールをまとめて共有できる機能ではありません。Memboにはグループでの予定共有を目指した機能もありますが、これは「Membo+」で今後提供が予定されているもので、現時点の画面には「準備中です」と表示され、公開版では使えません。日程調整そのものは、当面は上に挙げたような外部ツールや、直接のやり取りで進めることになります。
誰がこの役目を担うにしても、「毎回同じ人が候補日を出し、催促し、まとめている」という状態に気づいたら、それは負担が偏っているサインです。持ち回りにする、候補日を出す作業だけでも分担するなど、小さな調整から始めるとよいでしょう。
6. スタジオを押さえる係と、それを伝える係
スタジオの予約は、単に「予約を取る」だけでなく、「取った予約の内容を全員に正しく伝える」という、もう一つの役目とセットになっています。この二つを同じ人が担う必要はなく、分けたほうがうまくいくバンドもあります。予約の基本的な流れやキャンセル規定の考え方そのものは初めてのバンド練習完全ガイドで詳しく扱っているので、ここでは「係を決めるときに知っておきたい視点」に絞って見ていきます。
スタジオによって、予約の手段もキャンセル規定もまったく異なります。例えば次の2社を比べてみると、その違いがよくわかります。
| スタジオ | 予約の手段 | キャンセル規定 |
|---|---|---|
| サウンドスタジオノア | 会員登録のうえWEB・電話・来店のいずれも可。個人練習のWEB予約は前日21:00から | 6〜2日前まで50%、前日・当日は100%(公式FAQ) |
| スタジオペンタ | 電話または店頭のみ。ネット予約・メール・SNSでの予約は不可 | 1週間前まで無料、6日前〜前々日は半額、前日・当日は全額(公式サイト) |
この2社だけを見ても、予約できる手段も、キャンセル料が発生し始めるタイミングも大きく違います。つまり「予約係を決める」ということは、単に「誰が電話をかけるか」を決めることではなく、「その店が何日前から何%のキャンセル料を取るのかを把握している人を、バンドの中に一人作る」ということでもあります。当日不参加やドタキャンが発生したときに慌てないためにも、この情報を知っている人がはっきりしていることには意味があります。予約を実際に押さえる人と、その内容を全員のグループに伝える人を分けている場合は、伝達漏れが起きないよう「誰が最終的に確認したか」までひとこと共有しておくと安心です。スタジオでの練習時間そのものの使い方については、スタジオ2時間を最大限に活かす段取りやスタジオで効率よく合わせるコツも参考にしてください。全国のスタジオ・ライブハウスの探し方についてはこちらの記事で扱っています。
7. お金の係 — 集金と記録だけ決めておく
スタジオ代の分担方法、交通費の扱い、ノルマの精算といった「お金の中身のルール」については、すでに新メンバーが決まったら最初に話すお金とルールで詳しく整理しています。この章では中身のルールには触れず、「誰がその役目を実際に担うか」だけに絞って考えます。
お金の係が担う仕事は、大きく分けて「集金する」ことと「記録として残す」ことの二つです。集金は、練習のたびにその場で現金を集める方法のほか、PayPayのグループ支払い機能を使い、グループを作成して金額を入力すれば各メンバーが「支払う」を押すだけで精算できる仕組みもあります(PayPayグループ支払い)。手数料については公式ページに明確な記載が見当たらないため、利用する前に最新の条件を確認しておくことをおすすめします。記録については、簡単なメモやスプレッドシートに、誰がいつ何を支払ったかを残しておくだけでも、後から「誰が立て替えたままになっているか」を確認しやすくなります。
この係を一人に固定する場合、その人が金銭トラブルの矢面に立つことにもなります。集金を催促する役目は感謝されにくく、かといって曖昧にしておくと不満の種になりやすい仕事です。だからこそ、お金の係を引き受けている人には、他のメンバーが「ありがとう」を言葉にして伝えることが、地味ですが効果のある対策になります。
8. 機材の運搬 — 車を持っている人に全部寄る問題
アンプ、ドラム一式、ペダルボードなど、車がないと運びにくい機材を抱えるバンドでは、車を持っているメンバーに運搬の負担が集中しやすくなります。これは第4章で触れた「③物理的に近い・条件が合う人がやる」の典型例であり、合理的な割り振りである一方、毎回同じ人が運転し、ガソリン代や駐車場代まで負担していると、次第に不満が積み重なっていきます。
対策として考えられるのは、運搬にかかるガソリン代や高速代を、第7章で触れたお金の係を通じて他のメンバーと分担する、複数人が交代で車を出せるように運転できるメンバーを増やしておく、あるいはスタジオやライブハウスにレンタル機材があるか確認して持ち込む機材自体を減らす、といった方法です。どれか一つに決める必要はなく、負担が大きいと感じた時点で一度話題に出すことが、状態を固定化させないための第一歩になります。「車を出せる」ということ自体も立派な貢献であり、それを言葉にして共有しておくだけでも、運転しているメンバーの負担感は変わってきます。
9. ライブのブッキングと当日の進行
ライブハウスへの出演交渉は、演奏以外の仕事の中でも対外的な度胸が求められる仕事です。出演したいライブハウスに連絡を取り、日程や対バンの組み合わせ、ノルマの条件をすり合わせる作業には、ある程度の経験がものを言います。この役目を一人が続けて担っている場合、その人が抜けたときにバンド全体が出演機会を失いかねないという意味でも、少なくとも二人目の候補を育てておく価値があります。
当日になると、今度は別の種類の「演奏以外」の仕事が発生します。搬入の順番調整、サウンドチェックの立ち会い、物販、受付、写真や動画の撮影、MCの段取りなど、細かなタスクが一気に増えます。
| 当日のタスク | 内容 |
|---|---|
| 搬入・サウンドチェックの立ち会い | 他のバンドとの時間調整、音響スタッフとのやり取り |
| 受付・物販 | チケットもぎり、グッズ・音源の販売 |
| 撮影 | ライブ写真・動画の記録、SNS用の素材づくり |
| MC・進行 | 曲間のトーク、時間配分の管理 |
正規メンバーだけでこれらすべてを回すのが難しい場合は、サポートメンバー・助っ人という形で、当日だけ手伝ってくれる人に協力を仰ぐという選択肢もあります。演奏では関わらなくても、受付や撮影といった「演奏以外」の部分だけを手伝ってもらう関わり方も十分に成立します。
10. 宣伝・SNS・写真 — やる人がいないなら「やらない」でいい
SNSでの告知や、ライブ・練習の写真撮影といった宣伝まわりの仕事は、得意な人とそうでない人の差が特にはっきり出る領域です。バンド「打首獄門同好会」では、ボーカル・ギターの大澤敦史氏がカバー曲を除くほぼすべての作詞・作曲を手がけながら、公式X(旧Twitter)アカウントの管理も担っていることが知られています(打首獄門同好会 - Wikipedia)。「作る仕事」と「発信する仕事」が一人に集まる例は、規模を問わず起こり得ます。
大切なのは、宣伝を頑張ること自体を目的にしないことです。SNSでの発信が得意な人がバンドにいなければ、無理に始める必要はありません。最低限、ライブの告知先として、募集や告知に使えるホームページやSNSアカウントがあれば十分に機能します。Memboの募集投稿フォームには「ホームページ・SNS」という項目があり、活動の告知先やSNSアカウントのURLを紐づけて掲載できます。まず投稿を出しておき、そこに既存のSNSアカウントを紐づけるだけでも、宣伝の役割を過度に一人に背負わせずに済みます。
11. 音源とデータの置き場所を決める
練習の録音、デモ音源、ライブの写真や動画――こうしたデータは活動を続けるほど増えていきますが、「どこに置くか」を決めていないバンドは意外と多く、気づけば各メンバーのスマートフォンやパソコンにばらばらに散らばっていた、という状況になりがちです。
大がかりな仕組みは必要なく、共有フォルダを一つ決めておくだけで十分に機能します。例えばGoogleドライブは、すべてのGoogleアカウントに15GBの保存容量が付属しており(Google Photos・Drive・Gmailの合計)、編集・コメント・閲覧といった権限を分けてフォルダを共有できます(Google One)。誰が音源をアップロードする係で、誰が整理する係かまで細かく決める必要はありませんが、「置き場所」だけは最初に一箇所に決めておくと、後から探す手間が大きく減ります。
12. 決めすぎないという選択
ここまで演奏以外の仕事を細かく分けて見てきましたが、すべてのバンドに役職表のようなものが必要なわけではありません。3人編成のような小さなバンドであれば、日程調整も機材運搬も宣伝も、その都度できる人がやる、という緩やかな運用のままで十分に回ることも多くあります。決めすぎることが、かえって窮屈さを生むこともあります。
一方で、「リーダー」という肩書きを一人が持つバンドもあります。SEKAI NO OWARIでは、Nakajin氏が2013年よりリーダーを務め、主にギター・作詞・作曲を担い、編曲はメンバー全員で行うことが多いとされています(Nakajin - Wikipedia)。ここで確認できるのは、あくまで楽曲づくりという創作面でのリーダーシップです。日程調整やライブの対外交渉といった事務的な仕事まで一人が担っているという裏付けはなく、「リーダー」という肩書きと、「演奏以外の実務を誰が担うか」は、必ずしも同じ話ではないという点は押さえておきたいところです。
大切なのは、役職の名前を決めることではなく、「今、何がうまく回っていて、何が特定の誰かに寄りすぎているか」を、メンバー同士でときどき言葉にして確認しておくことです。それさえできていれば、細かい役職表は必要ないバンドのほうが、むしろ多いはずです。
13. 募集のときに「何を担ってほしいか」をどう書くか
ここからは、新しいメンバーを募集する側の視点です。演奏のパートだけでなく、演奏以外の面で担ってほしいことがあるなら、募集を出す段階でそれを言葉にしておくことをおすすめします。Memboの募集投稿フォームには「役割」や「担当」を専用に登録する項目はありません。パート・ジャンル・活動場所・都道府県・求める年代・求める性別といった項目は用意されていますが、演奏以外の分担については、自由記述の「詳細説明」欄に書き込む形になります。
例えば、次のように書いておくと、応募する側にとって具体的にイメージしやすくなります。
- 「日程調整はグループで持ち回りにしています。得意な方は大歓迎ですが必須ではありません」
- 「機材運搬で車を出せる方がいると助かりますが、必須条件ではありません」
- 「SNSでの発信を手伝ってもらえる方も歓迎です」
ここで大切なのは、「必須」と「歓迎」を区別して書くことです。演奏以外の役割を求める際に、それをすべて必須条件のように書いてしまうと、演奏面では条件に合う人が応募をためらう原因になりかねません。「できれば助かる」「得意であれば歓迎」という温度感で書いておくほうが、間口を狭めずに済みます。募集文の書き方全般についてはメンバー募集広告の書き方も参考にしてください。応募後の連絡は、Memboの募集詳細ページにある「投稿へメッセージ」ボタンから、1対1のメッセージのやり取りで進みます。複数人が同時に参加するグループチャットの機能は現時点ではないため、条件のすり合わせは基本的に投稿者と応募者の間で個別に行うことになります。
14. 応募する側 — 演奏以外で自分が役に立てることを伝える
逆に、募集に応募する側にとっても、演奏面のアピールだけでなく、演奏以外で自分が役に立てることを伝えておくのは有効な手段です。多くの応募者が演奏技術や経験年数だけを書く中で、「運転できます」「SNSの運用経験があります」「経理の仕事をしていて集金の管理が得意です」といった一言が添えられていると、募集側の印象に残りやすくなります。応募する立場からの心構えはバンド募集文の読み方でも扱っているので、あわせて確認してみてください。
Memboのプロフィールには、演奏楽器・経験年数・好きなジャンルといった演奏面の項目に加えて、「自己紹介」という自由記述の欄があります。演奏以外で担えることを伝える専用の項目は用意されていないため、この自己紹介欄を使って書いておくことになります。あわせて「活動エリア」「経験年数」「好きなジャンル」「公式サイト・ブログ」も登録できます。演奏面の項目を埋めたうえで、自己紹介欄に演奏以外でできることを一言 添えておくと、募集する側が全体像をつかみやすくなります。
実際に応募が来た側がどう選ぶかを考えると、演奏の技術水準だけでなく「このバンドの負担を一緒に分け合ってくれそうか」という印象も、無意識のうちに判断材料になっています。バンドに誘われたときの記事でも触れたとおり、「自分に期待されているパートと役割」を確認することは、参加する側にとっても大切な視点です。演奏以外の面で自分にできることを一言添えておくだけで、募集する側とのミスマッチを未然に減らせる可能性があります。
15. 一人に寄りすぎたときの立て直し方
気づいたときには、すでに一人に負担が集中していた、というケースも少なくありません。日程調整も、お金の管理も、機材の運搬も、気がつけば同じ人がすべてこなしている状態です。こうした状態を立て直すために、まず必要なのは「誰か一人を責める」のではなく、第2章で紹介した棚卸しの一覧を、あらためてメンバー全員で見直すことです。
その際に有効なのは、担っている本人から不満として切り出すのではなく、「最近、負担が偏っていないか一度確認したい」という形で、バンド全体の議題として持ち出すことです。誰か一人の問題として扱うと、指摘された側もされた側も気まずくなりやすいものです。あくまで構造の話として扱えば、話し合いやすくなります。
もし話し合いをしても改善が見られず、担っていた人がバンドを離れることになった場合は、演奏面だけでなく演奏以外の仕事の穴も一気に空くことになります。メンバーが突然脱退した時の対処法もあわせて確認し、演奏の穴埋めだけでなく、その人が担っていた演奏以外の仕事も一緒に棚卸しし直すことをおすすめします。
16. 演奏以外の分担についてよくある質問
Q. Memboでバンド内のグループスケジュールを共有できますか
公開版のMemboには、複数メンバーのスケジュールをまとめて共有する機能は現時点ではありません。グループでの機能は「Membo+」で今後提供が予定されており、現在は画面上に準備中である旨が表示されます。日程調整は、第5章で紹介したような外部の調整ツールや、直接のやり取りで行うことになります。
Q. 役割は必ず決めておかなければいけませんか
いいえ。第12章でも触れたとおり、人数が少ないバンドであれば、細かい役割分担をせずに、その都度できる人が担う運用でも問題なく回ることがあります。大切なのは、負担が偏っていないかをときどき確認する習慣を持つことです。
Q. 担当を途中で変えたいときはどうすればいいですか
変えたいこと自体を、遠慮せずに言葉にすることが第一歩です。急に「今日からやめます」と伝えるのではなく、次に担う人が決まるまでの引き継ぎ期間を設けると、混乱を避けられます。
Q. お金の係を辞めたいと感じたら、どう伝えればいいですか
お金の係は感謝されにくく、負担を感じやすい役目です。「他の仕事も分担したいので、集金の係を交代したい」というように、自分の状況を理由にして伝えると角が立ちにくくなります。お金まわりのルールそのものについてはこちらの記事も参考にしてください。
Q. 募集の段階で演奏以外の役割まで細かく条件にしてもいいですか
条件にすること自体は問題ありませんが、第13章で触れたとおり、必須条件として書きすぎると応募の間口を狭めてしまいます。「歓迎」「できれば」といった温度感を使い分けることをおすすめします。
17. まとめ|「誰が弾くか」の隣に「誰がやるか」を置く
この記事では、バンド活動における「演奏以外」の仕事を棚卸しし、なぜ一人に寄りやすいのか、どんな考え方で担い手を決められるのか、そして募集や応募の段階でそれをどう伝えておくかまでを見てきました。
- 演奏以外の仕事を書き出す:日程調整、スタジオ予約、お金の管理、機材運搬、ライブブッキング、宣伝、データ管理――まずは全部並べてみることから始まります
- 一人に寄る構造を自覚する:「気づいた人がやる」の積み重ねは、誰にでも起こり得ます
- 決め方を選ぶ:得意な人、時間がある人、条件が合う人、持ち回り――タスクごとに組み合わせます
- 決めすぎない選択肢も持つ:小さなバンドには、細かい役職表が要らないこともあります
- 募集と応募の両方で伝える:募集する側は「詳細説明」欄に、応募する側は「自己紹介」欄に、演奏以外で担えること・担ってほしいことを書いておきます
「誰が弾くか」を決めるのと同じくらい、「誰がやるか」を言葉にしておくことは、バンドを長く続けるための地味だけれど確かな備えになります。もし今、演奏以外の仕事が誰か一人に偏っていると感じているなら、この記事の棚卸し表を、一度そのままメンバーで見返してみてください。そして新しいメンバーを探すときは、演奏面だけでなく演奏以外の分担についても、Memboの詳細説明欄や自己紹介欄を使って伝え合うことをおすすめします。使い方に迷ったらMemboのヘルプページや使い方ガイド、アプリの使い方ページ、執筆者についてのページもあわせて参考にしてください。
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