「ドラムの次に見つからないのがベース」——これはバンドマンの共通認識。募集サイトに投稿しても応募が来ない、来ても続かない。30年以上バンドを続けてきた筆者が、ベーシスト不足の本当の理由と、経験から編み出した5つの解決策を正直に語ります。ギタリスト転向組の狙い方、初心者歓迎の書き方、セッションでの声かけ術まで。
「ベースどうする?」問題
バンドを組もうとして、ボーカル・ギター・ドラムが揃った。「よし、あとはベースだけだ」——ここから先が長い。
ドラマー不足の記事でも触れましたが、メンバー募集サイトのパート別需給バランスで、ベースは「慢性的に不足」と書きました。ドラムほど絶望的ではないけれど、ギターのように「募集出したら翌日に5件応募が来た」なんてことは絶対にない。
僕は20代からバンドをやり続けて、50代の今もメンバーを探し続けています。吉祥寺の曼荼羅や福生のUZU、いろんなハコでいろんな人と演奏してきました。Blues、Soul、ルーツミュージック——僕がやってきた音楽は、ベースラインが命です。だからこそ、ベーシスト探しには人一倍苦労してきたし、人一倍こだわってきた。
この記事では、なぜベーシストが見つからないのか、そしてどうすれば見つけられるのかを、僕の30年の経験から正直に書きます。
ベーシスト不足の実態 — 数字で見るリアル
まず、僕の体感と募集サイトの投稿傾向から見た、ベース募集の現実を整理します。
| 指標 | ベースの現状 | 参考: ギター |
|---|---|---|
| 募集の多さ | 多い(ドラムに次ぐ2番目) | 少なめ |
| 応募の多さ | やや少ない | 非常に多い |
| 1件の募集に対する応募数 | 体感で0〜2件 | 体感で3〜8件 |
| スタジオに来る確率 | 応募者の約半数 | 応募者の7〜8割 |
| 加入後の定着率 | やや低い | 普通 |
特に注目してほしいのは「加入後の定着率」。ベーシストは他バンドからの引き抜きや掛け持ちが多く、せっかく見つけても半年で「もう1つのバンドが忙しくなって」と抜けていくケースが少なくありません。ドラマーと同じ構造です——数が少ないパートほど引く手あまたで、1つのバンドに定着しにくい。
なぜベーシストは少ないのか — 5つの理由
1. 「地味」というイメージが根強い
ギタリストはソロを弾いて拍手を浴びる。ボーカルはステージの主役。ドラマーは叩く姿が絵になる。じゃあベーシストは? 「後ろで黙々と弾いている人」——これが世間の一般的なイメージです。
実際にはベースはバンドの屋台骨で、グルーヴの要で、ドラムとギターの橋渡し役という超重要なポジション。でも、その魅力が伝わるのは「わかる人」だけ。中学生や高校生が「ベーシストになりたい!」と思う瞬間は、ギタリストやボーカルに比べて圧倒的に少ない。
2. 始めるきっかけが「消去法」
軽音楽部で楽器を選ぶとき、ギター→ドラム→ボーカル→キーボードの順で人気が埋まって、「残ったからベース」という人が実はかなり多い。消去法で始めた人は、バンドが解散すると楽器ごとやめてしまう傾向があります。
もちろん、そこからベースの魅力にどっぷりハマる人もいる。でも「最初からベースが好きで始めた」人の絶対数が少ない以上、母数が足りないのは構造的な問題です。
3. ギターとの比較で損をしている
ベースとギターは見た目が似ている。弦が4本か6本かの違い。でも世間の注目度は圧倒的にギター。YouTube動画の再生数、楽器店での展示面積、雑誌の表紙——すべてにおいてギターが優遇されている。
「どうせ弦楽器をやるならギターの方がカッコいい」と思われてしまう。ベースに対する敬意が足りない世の中なのです(ベーシストの皆さん、怒って当然です)。
4. 一人で弾いても面白さが伝わりにくい
ギターは一人でコード弾きして歌える。ピアノも同じ。ドラムはリズムパターンを叩くだけで楽しい。
ベースは? 一人で弾いていると「ブーンブーン」と低い音が鳴るだけ。ベースの本当の気持ちよさは、ドラムのキックと合わさった瞬間、ギターのコードと噛み合った瞬間に初めてわかる。バンドで鳴らして初めて「ベースってこんなにカッコいいのか!」と気づく。でも、そこにたどり着く前にやめてしまう人が多い。
5. 上手いベーシストほど掛け持ちで忙しい
ドラマー不足の記事でも同じことを書きましたが、需要と供給のアンバランスは掛け持ちを生みます。いいベーシストには常に声がかかる。2つ3つ掛け持ちしている人はザラで、結果として「フリーのベーシスト」がさらに減る。
この構造は変えられない。だから「フリーのベーシストを探す」だけでは見つからないのです。発想を変える必要があります。
ベーシストの見つけ方 — 5つの解決策
ここからが本題です。募集サイトに投稿して待つだけでは見つからないベーシスト。じゃあどうするか。僕が30年間で実際に試して効果があった方法を5つ紹介します。
解決策1: ギタリスト転向組を狙う
これが一番成功率が高い。メンバーが見つからない人の共通点の記事にも書きましたが、「探す範囲を広げる」ことが大事です。
ギタリストは余っている。募集サイトで「ギター希望」の応募が何件も来て断っている——それなら、その中から「ベースもやってみない?」と声をかけてみてください。
ギター経験者のベース転向には大きなメリットがあります。
- フレットの押さえ方、ピッキングの基礎がすでにある
- コードやスケールの知識がある
- バンド経験があるなら、アンサンブルの感覚もある
- 「ギターで入れるバンドがないから」という人は、ベースなら即戦力として歓迎される喜びを感じる
実際、世界的に有名なベーシストの中にもギターから転向した人は大勢います。ポール・マッカートニーもジョン・ポール・ジョーンズも、最初はギターを弾いていた。
解決策2: 初心者に「一緒に始めよう」と声をかける
「ベース歴3年以上」「オリジナル曲に対応できる人」——こんな条件をつけていませんか? その条件、外してください。
ベースは、3ヶ月真面目に練習すればバンドのリハに参加できるレベルになれる楽器です。ルート弾きだけなら1ヶ月でもいける。初心者がバンドに入るためのガイドでも書きましたが、「経験ゼロでもバンドは始められる」のです。
「ベースに興味があるけど楽器を持っていない」という人には、練習スタジオでレンタルベースを使って一度触らせてあげる。それだけで「やってみたい」に変わる人がいます。
バンド活動にかかるお金の記事で書いた通り、初心者用ベースは2〜3万円から手に入る。ギターより初期投資が低いことも伝えるといい。
解決策3: セッションイベントで直接スカウト
ジャムセッションやオープンマイクに通うのは、ドラマー探しだけでなくベーシスト探しにも有効です。セッションに来るベーシストは「もっと演奏したい」欲がある人が多い。
吉祥寺、下北沢、渋谷、新宿あたりのセッションバーには、フリーで活動しているベーシストが来ます。一緒にセッションして、息が合ったら「うちのバンド、興味ない?」と声をかける。募集サイトの文面だけでは伝わらない「音を出した時のフィーリング」がそこにはある。
解決策4: SNSとDTMコミュニティを使う
YouTubeやX(Twitter)、Instagramで「ベース弾いてみた」動画を投稿している人は大勢います。フォロワー数が少なくても、上手い人はいる。直接DMで「バンドに興味ありませんか?」と連絡するのは、意外と嫌がられません。むしろ嬉しがってくれる人が多い。
DTMで打ち込みベースを弾いている人にも声をかけてみてください。DAW上でベースラインを作れる人は、実際に弾かせてもみても筋がいいことが多い。
解決策5: 外国人ベーシストにも目を向ける
外国人が日本でバンドメンバーを見つける方法の記事でも書きましたが、日本在住の外国人ミュージシャンは「バンドに入りたいけどどこで探せばいいかわからない」人が多い。特にアメリカやヨーロッパ出身のベーシストは、Funk、Soul、R&Bなどのグルーヴを体に染み込ませている人がいる。
言葉の壁はMemboの翻訳チャット機能で乗り越えられます。「日本語が話せないから」で候補から外すのはもったいない。音楽に国境はないのだから。
体験談: 「うちのベース持って行っていいから、やってくれない?」
正直に書きます。僕は今もベーシストを探し続けています。まだ見つかっていない。
これまで何度も、ギタリストに「ベース、やってみない?」と声をかけてきました。セッションで知り合ったギタリスト、募集サイトで応募してきたギタリスト、音楽の話で盛り上がった友人。「あなたのリズム感覚があれば、すぐいいベーシストになれると思う」と。
ある時は、自分の家にあるベースを差し出したこともある。「うちにベースあるから、持って行っていいよ。とりあえず触ってみてくれないか」と。
結果はどうだったか。興味を持ってくれる人はいた。でも、続かなかった。「やっぱりギターの方が好きで」「仕事が忙しくなって」「思ったより難しくて」——理由はいろいろだ。
それでも僕は声をかけ続ける。まだ弾いたことがない人にも、しばらく弾いていない人にも。「ベース、やってみない?」と。
実は今も、このMemboに自分自身の募集を出してベーシストを探しています。自分で作ったサービスで、自分が一番切実に探している。それくらい、ベーシストは見つからない。でも、諦める気はまったくない。
きっといつか見つかる。そう思えるのは、この30年間で何度も「予想しないところから出会いはやってくる」ことを経験してきたからです。ドラマーを3ヶ月探してセッションバーで出会った話もそうだった。諦めた頃に、ふっと現れる。
だからこの記事で僕が伝えたいのは、「ベーシストは見つけるものじゃなく、育てるもの」という発想。そして、見つかるまで声をかけ続ける覚悟です。
ベーシスト向け募集文の書き方 — 響くポイント
ベーシストに刺さる募集文には、他のパートとは違うポイントがあります。僕がこれまで試して反応が良かった書き方をまとめます。
「初心者歓迎・ブランクOK」は必ず書く
ベース人口が少ない以上、間口を広げるのは必須。「ベース歴は問いません。音楽が好きな気持ちがあれば大丈夫」——この一文があるだけで、応募のハードルがぐっと下がります。昔ベースを弾いていたけど何年もブランクがある人も、この言葉に背中を押されます。
バンドの音源を必ず添付する
ベーシストは「自分がどういうラインを弾くことになるか」をイメージしたい。デモ音源があると「この曲なら自分でも弾けそう」と判断できる。音源がないと、応募する側は不安でしかない。スタジオでスマホ録音したものでもいいから、必ず添付しましょう。
ベーシストへのリスペクトを文面に込める
「ベースなら誰でもいい」「とりあえずベースが欲しい」——こういう募集文、実はかなり多い。ベーシストはこれを敏感に見抜きます。
代わりにこう書いてみてください。「ベースがバンドの核だと思っています。一緒にグルーヴを作ってくれるベーシストを探しています」。ベーシストは「自分の役割を理解してくれるバンド」に惹かれます。
練習頻度と費用を明記する
「月2回、土曜午後、スタジオ代は全員折半」——これを書くだけで応募率が上がります。曖昧な募集文からは「週3回練習を求められるかも」「リーダーだけスタジオ代を払わないかも」という不安が生まれる。バンド活動のコストを理解した上で、明確に提示することが大切です。
Memboで多言語募集を出す
日本語で募集文を書くだけで8言語に翻訳されます。日本在住の外国人ベーシストにもリーチできる。コピーバンドの始め方で紹介したような有名曲なら、国籍に関係なく「知ってる!弾ける!」という人が見つかるかもしれません。探す範囲は広いほどいい。
ベースの魅力を伝えよう — 「地味」は最大の誤解
「ベースは地味」——この言葉が、ベーシスト不足の根っこにある。だから僕たちバンドマンが、ベースの魅力をもっと語るべきだと思う。
ベースがいないバンドの音を聴いてみてください。スカスカで、腰がなくて、何かが決定的に足りない。ベースが入った瞬間に音が「立体」になる。ドラムのキックとベースのルートが噛み合った時のあの低音の振動は、他の楽器では絶対に出せない。
James Jamersonが弾いたMotownのベースライン。Jaco Pastoriusの「Portrait of Tracy」。Flea のファンクベース。日本なら亀田誠治のメロディアスなライン。ベースが「地味」だなんて、聴いていない人の言葉です。
ベーシストを探しているあなたが、まずベースの魅力を本気で語れるようになること。それが、いいベーシストを引き寄せる第一歩です。
まとめ: ベーシストは「育てる」つもりで探せ
ベーシスト不足は構造的な問題です。始める人が少なく、辞める人が多く、上手い人は引く手あまた。この現実は簡単には変わりません。
だからこそ、発想を変える必要があります。
- ギタリスト転向組を狙う — 余っているギタリストの中に、未来のベーシストがいる
- 初心者歓迎で門戸を広げる — ベースは3ヶ月でバンド参加できるレベルになれる
- セッションで直接スカウト — 音を合わせてフィーリングで選ぶ
- SNS・DTMコミュニティにアプローチ — 「弾いてみた」動画の向こうに候補者がいる
- 外国人ベーシストにも目を向ける — Memboなら8言語で募集を出せる
そして何より、「ベーシストは見つけるものじゃなく、育てるもの」。楽器未経験でもいい、ギターからの転向でもいい、ブランクがあってもいい。「一緒に音楽をやりたい」という気持ちがある人を見つけて、一緒に育てていく。その覚悟があるバンドに、いいベーシストは集まります。
僕は50代になった今でも、新しいメンバーとの出会いを求めています。ベーシストがいないからバンドを諦める? そんなの、もったいなさすぎる。
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バンドの屋台骨は、あなたが思っているより近くにいるかもしれない。——次のセッションで隣にいるギタリストが、未来のベーシストかもしれません。
